「ンナナ~」
店番をする18号のあくびにも似た鳴き声が静かな店内に響いた。
昼時、<Random Play>に客は人っ子一人いない。
開店休業状態などと言われても仕方がないが――店内の奥、客の立ち入ることのできないその部屋の中では今まさにこれから人命救助が行われようとしていた。
『――工事の片づけ最中にどうもグレースたちが裂け目に落っこっちまったみたいなんだ。アイツらはキャロットも持ってないし、いなくなった場所の特定は出来てはいるが、現場の人間がその先を追っていくのも無茶に近い。そういうわけで悪いな、プロキシ。グレースたちを探してきてくれ』
電話口から発せられるクレタの声がリンの耳に届くと、アキラが目配せをしてH.D.Dの前に座った。
「オッケー、クレタ。さっきアンドーさんがうちの店まで来てくれたから、今頃イアスは無事にホロウの入り口に到着した頃だと思う。お兄ちゃん、そろそろ繋ぐよ」
「ああ、まかせて」
アキラが電話の向こうにも聞こえるように少し声を張ると、クレタの『頼んだぜ』という声が聞こえてきた。
リンが電話を切り、そしていくつかのスイッチを入れると、「いってらっしゃいお兄ちゃん」とボタンを押した――。
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