#1 「新しく君の修理担当になったグレース・ハワードだ」 - 1/3

その時は突然やってきた。

ビリーが所用から帰ってきた午後、事務所に入るとちょうど電話を終えたばかりのようなニコが彼の方をくるりと向いて笑いかけた。

「ビリー! アンタの修理、今回は格安でできそうよ!」
「何!? 格安って、いつものとこ部品の半額サービスでもやってんのかぁ!?」
「違うわ。いつものとこじゃないの」
「いつものとこじゃない??」

 きょとんとするビリーに、ニコは両手を上げて嬉しそうにくるくると回りだす。

「いつものとこよりもと~~~っても安いとこよ! いつものとこは技術料がやたら高くて気に食わなかったけど、今回のところは部品代だけでオーケーですって! とにかく一回分は修理費で頭を悩ませることもないわね!」
「いや、毎度俺の給料から修理費引いてんだろ親分……悩ます頭がどこにあんだ?」
「とにかく! 今から行ってもいいって言われたからすぐ行くわよ。さ、準備して!」
「これから行くのか? 事務所から遠いとこなのか?」
「そこまででもないわよ。ほら、あたしがナビしてあげるからアンタは運転ね!」
「わかったぜ親分」

 ちょうどアンビーも猫又も事務所にいなかった為、二人は事務所の扉に鍵をかけ出発する。車に乗り込むと、ニコが助手席に座ってナビを設定し始めた。ビリーが車を発進させると、ナビに誘導され大きい通りへと出る。ちらりと見た画面上で修理工場の位置を確認するとビリーは運転に集中した。

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