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ノックの音が室内に響く。
ガチャ、と扉が開いたかと思うと入ってきたのはイアスを小脇に抱えたアンドーさんだ。
「おおプロキシ、連れて帰ってきたぜ」
「アンドーさん。早かったね」
「そうか? ちゃんと安全運転で来てやったからよ、ほれ、おたくんとこのボンプは五体満足だ」
「あはは、実はグレースさんが連れて帰ってくるのかとひやひやしていたんだ」
「アイツは何しでかすかわかんねーからな、裂け目に落ちたっつーこともあって今頃社長と病院で検査中だ」
「そうか、他の二人も大丈夫そうかい?」
「なーに、全員かすり傷程度だったし大丈夫だろ!」
にかっと笑ったアンドーさんに、僕も微笑み返す。
床に下ろされたイアスはぽてぽてと僕の方へ走ってくると、怖いことがあったのか僕の脚にしがみついた。
「……グレースさんが怖かったのかい」
「ンナァ……」
「よしよし、もう安心だよ」
イアスを撫でてやると、そっと抱き上げた。
「そういやもう一人のプロキシはいねぇのか? グレースが悪いことしたっつって謝っとけって言われたからよ、謝ってやりてーんだが……」
「ああ……イアスを抱きしめてたことかい? 妹はちょっと部屋に行ってるんだ。後で僕の方から伝えておくよ」
「悪ぃな。にしても兄貴想いのいい妹だよなぁ! いつ見てもお前らはいい兄妹だ!」
「はは、小言が多いだけさ。むしろ今は僕の方が……いや、何でもない。イアスを届けてくれてありがとう」
「おう、金はオレが戻ったらすぐ振り込むようベンに言っとく。今回も感謝してるぜ、またなあんちゃん!」
「当然のことをしたまでさ。じゃあね、アンドーさん」
颯爽と帰っていくアンドーさんを玄関まで見送り、手を振った。
抱きかかえていたイアスを床に下ろすと、イアスは一目散に階段を駆け上がっていった。
「充電かな」
僕は片づけをするべくもう一度奥の部屋へと戻った。
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