君に似た君じゃない君 - 2/7


 ***

 最寄りのバス停で僕たちは並んでバスが来るのを待っていた。
 時刻表を見れば、車であと三分というところ。
 僕はポケットに突っ込んでいたスマホを見て、首を傾げた。
 こんなの、使ってたっけ。

「あのねあのね! 今日のお弁当はわたしの力作だよ!」
「力作?」
「唐揚げハンバーグ照り焼きチキン弁当! ご飯ましまし!」
「何それ、肉だらけじゃない。野菜は?」
「端っこの方にトマトいれたも~ん」
「トマトだけじゃダメでしょ。もっとさぁ、緑系の野菜入れないと、弁当が真っ茶色で見栄え悪いよ」
「見栄えはどうでもいいの~! 美味しさとスタミナ重視!」
「栄養も重視しなさい」
「んもー、じゃあハルマサが作ってよ! あ、やっぱいーや。ハルマサが作ったら野菜尽くしで真緑弁当になっちゃうもん」

 蒼はそう言うと唇を突き出して不満そうな顔をしてみせた。
 どうやらすでに僕は真緑弁当を作ったことがあるらしい。記憶にないんだけど。

「ハルマサ、今日も放課後おべんきょー?」
「お勉強?」
「いっつもわたしが部活終わるまでお勉強しながら待ってるでしょ。それともお友達と遊びに行っちゃう?」
「いや……」

 いつもの勉強も、友達と遊びに、も上手く頭の中で想像ができない。
 できないけれど、じゃあ何なら『いつもの』ことなのかわからない。
 頭の中にもやがかかったようで、上手く、考えられない。

「待ってるよ」
「わーい! じゃあ終わったら連絡するね!」
「あー、うん」

 話しているとバスが来た。
 バスの表示灯を見ると、行先に僕たちの高校名が書かれている。
 すでにたくさんの乗客を乗せたバスの中へ二人してどうにか乗り込むと、熱気を感じる車内の中で僕たちは身を寄せ合いながら揺られた。

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