君に似た君じゃない君 - 3/7


 ***

 校舎の中へ入ると、蒼は慌てたように室内履きに履き替えて自分の教室棟へと走って行ってしまった。
 一年生は遠いのだ。
 かくいう僕は三年。
 教室までは玄関から二分とかからない距離。
 階段を上り、自分のクラスを見つけると僕は吸い込まれるようにそこへ入っていった。

「おはよー浅羽!」

 誰かが僕を呼ぶ。
 多分、なんとなく聞き覚えのある声。
 でも、誰だっけ。

「一限から英語の小テストって知ってた? 俺なんもやってきてない~」
「小テスト? えー、いや、僕も知らないなぁ」
「なんだよお前もかよ。んじゃいっか!」

 けらけらと笑う短髪が似合う男子生徒。
 すぐ傍にいた眼鏡の茶髪男子がこっちを見た。

「でも今日の小テスト、赤点だったら追加の宿題出るとか言ってたぜ」
「嘘だろ!? 聞いてねーよ」
「お前が聞いてなかっただけだろ~」
「浅羽も聞いてなかったよな!?」

 僕に振られて、困ってしまう。
 困りながらも、僕はすぐ近くの席に腰を下ろした。
 ここが、僕の席。
 なんでかは知らないけどそうだと体が覚えている。

「まぁ赤点取らなきゃいいだけでしょ~、なんとかなるって~」
「浅羽のそののらりくらりとした感じ、腹立つんだよな。しっかり点取るしさぁ。お前やっぱテスト知らないとか嘘だろ!」
「ええ~? 知らない知らないほんとだって!」

 笑って返す。
 ああ
 いつもこんなふうに喋ってたような、そんな気もする。

 そうだ、そう。
 いつもこうして学校に通っていて、友達と他愛無い話なんかをしていて。
 授業を受けて、勉強して。
 昼には購買に行ってジュースなんか買って。
 それと一緒に妹が作ってくれたあの茶色いおかずばかりのお弁当を食べて。
 放課後は、模試が近いから教室で勉強して。
 部活が終わった妹と一緒に学校を出て、帰って。

 そんな

 日々を送ってた、んだよね?

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