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──全身を痛みが支配する。
うっすら開いた瞼の間から見えたのは、灰色の空と、青い肌。
「……ハルマサ!」
蒼角ちゃんは僕の名前を叫ぶと、僕の頬を撫でた。
「浅羽隊員、目を覚ましましたか!?」
「悠真、具合はどうだ!」
続いて月城副課長と雅課長が僕の視界に映り込んで来た。
「もうすぐ救急隊が着きますから、安心してくださいね。侵蝕緩和剤は十分打ってあります」
「侵蝕、緩和剤……? あー……と、僕、は」
「喋らないでください。浅羽隊員、あなたは大型エーテリアスとの交戦中に敵の爆破によって一時的に侵蝕率が上がってしまい、意識を喪失していたんです。手持ちの侵蝕緩和剤を全て使って今ようやく意識がはっきりしたところですよ」
「ああ~……へぇー……なるほど」
「柳、救急隊が来たぞ」
「……こっちです! 早く!」
なるほどね。
浸蝕で、幻覚を見てたのか僕は。
あ~でも、あんな平和な日常ってのも、良かったよね。
というか死にかけてたから、そんな平和な夢を見れたのかな。
冥途の土産に、ってさ~。
……なんて、
僕に振ってくる大粒の涙のことを考えたら、そんなこと言えないよね。

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