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『大型エーテリアスがこんなにうじゃうじゃなんて、僕聞いてないですよ~』
『悠真、疲れたなら休んでいていいぞ』
『課長~、さすがにまだ始まったばっかでおんぶにだっこは僕でも嫌ですって!』
『浅羽隊員、そちらに行きました』
『任せてくださいって、ほーら僕がお相手してあげる』
『ハルマサー! 蒼角がぶっとばすから待ってて!』
『ありがとねー蒼角ちゃ……』
先ほどまでいなかった新手のエーテリアスが、瞬間移動をして蒼角に迫る。
慌てて軌道を変え、弓を放った。
蒼角ちゃんも気づいて体の向きを変える。
なんてことはない、いつもと変わりない戦闘。
多数のエーテリアスを相手にするのは多少骨が折れるけど、僕たちにとって難しくはない。
ただ、ちょっと間が悪かったんだ。
新手のエーテリアスに気を取られていて、自爆タイプのエーテリアスが蒼角ちゃんの傍まで来ていることに気づくのに一瞬遅れた。
このままじゃ爆風をモロに受けてしまう。
いくら頑丈と言ったって、あの小さな体で真に受ければ怪我は免れない。
この時、僕の身体の方がひ弱なんだって再確認しておけばよかったんだ。
でも、再確認したところでかもしれない。
この子を守りたいから、
僕は、
身を挺して彼女の壁になった。
『っぐはあ!』
格好のつかない声が僕の口から出る。
『ハルマサ!』
倒れ込み、守ろうとした蒼角ちゃんを押しつぶすような体勢になった。
蒼角ちゃんが僕の身体を持ち上げ、抱きかかえる。
その後ろでちょうど課長が最後のエーテリアスを殲滅するのがわかった。
課長も、副課長もこっちへ走ってくる。
おかしいな、いつもならしんどくても体くらい起こせそうなものなんだけど。
『これは……侵蝕症状が進んでいます! 今の爆風を受けてでしょうか』
『悠真のポーチに侵蝕緩和剤が入っていたな。これか、打つぞ』
『うっ……』
『……これじゃ足りないです、課長もう一本打ってください』
『ああ……だが、これで最後だ』
『……まだだめです、補給ポイントまで戻ればいくらか……私が取りに』
『蒼角、持ってるよ』
がさごそ、という音が聞こえる。
それからちくりとした痛みを感じた。
『蒼角……あなたも侵蝕症状が』
『蒼角は大丈夫だよ。早く出口までハルマサ連れてこ。私おんぶしてくから。ここからの出口、確か近いってナギねえ言ってたよね?』
『いえ、それではだめです、補給ポイントまで一度戻って蒼角にも侵蝕緩和剤を』
『でもそれだったらハルマサもっと具合悪くなっちゃう! 早くホロウを出なきゃでしょ!?』
『それは……』
『蒼角、運べるもん』
体の向きが変わった。
どうやら蒼角ちゃんが僕を背負ってるらしい。
足が地面に着きそうな気がする。
『行こ、ナギねえ。キュウキュウタイの人が来たら、わたしも見てもらうから!』
──そこで意識は途切れた。

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