#6 甘い香りに誘われて - 1/2

「ねぇねぇハルマサ、わたしワッフル作ってみたい!」

 昼下がりの午後、優雅に休日ランチを食べたあとでぶらついていた街中は人で混雑し、どうにも疲れきってしまう。浅羽悠真は少しばかり休憩にと座ったベンチの上でうんと体を伸ばし、隣に座る蒼角にこの後どうするかと問いかけたのだ。
そして返ってきたのが、先の言葉だ。

「ワッフル?」
「うん! こないだ食べたのがー……すっごく美味しくてぇ……でもワッフルってどーやって作るんだろ? なんかでこぼこしてるし、ホットケーキとは違うよね?」

 蒼角が悠真の部屋に泊まりに来る時は、よく朝食にホットケーキを焼くことがある。その為ホットケーキの作り方は蒼角にもわかっているのだが、ワッフルの作り方は想像がつかないらしく頭を捻っていた。

「ワッフルねぇー、うちじゃ作れないんじゃないかなぁ」
「え!? 作れないの!?」
「うーん、専用のフライパンとか機械がないとさぁ」
「専、用、の……??」

 一体それがどんなものなのかわからない、という顔をしている蒼角を見かねて、悠真はスマホで検索すると画像を見せた。

「ほら、こういうのに生地を入れてさぁ、焼くわけ」
「へぇー! あ、じゃあじゃあ、これがあればワッフル食べ放題ってこと!?」
「材料があればまあたくさん作れるかな」
「すごーい! 蒼角これ欲しい! どこに売ってるかな?」

 わくわくした様子の蒼角が目を輝かせて辺りを見回す。この辺りは多くの店が立ち並んでいるので、その中にこのワッフルメーカーが売っているところがあるのではと思ったのだ。

「そうだねー、家電量販店なら間違いなくあるんじゃない?あとは小洒落た雑貨店なんかに置いてあったりもするかもだけど」
「カデンリョーハンテンって、あそこだよね!? ね、ね、ハルマサ行こっ! わたし、おこづかいでワッフルメーカー買ってみたい!」
「あのね、さっきも言ったけど生地の材料も買わないと作れないんだからね?」

 呆れたように言うも、逸る心が抑えきれない蒼角に手を引かれて悠真はベンチから立ち上がった。

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