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あまり馴染みのない街中を歩き、目当ての場所へと辿り着く。
蒼角はその外観を見て「ふわあ……」と感嘆の声を上げた。
「だ・が・し・や……これが、ダガシ屋さん! 前にプロキシが教えてくれたけど、ダガシって、少ないディニーでも買えるお菓子なんだよね」
初めてのお店を前に、少しだけ入るのを躊躇する蒼角。
そんな蒼角の横をすり抜けて、小さな子ども数人がお店の中へと入っていった。
──ガラララッ
「おばちゃーん! 1ディニーチョコ頂戴!」
「俺は3ディニーラムネ!」
「僕はね、僕は~……」
男の子たちの楽し気な声が聞こえてきて、蒼角は胸をドキドキとさせる。
「蒼角よりも小さい子たちが入れるお店なんだ、それにほんとにすっごく安いお菓子が買えるみたい……! よし!」
手に持つお財布をぎゅっと握り締め、蒼角は駄菓子屋へと入っていった。
中へ入れば、狭い店内の中にたくさんの種類のお菓子が並べられていた。籠の中に乱雑に入れられた小さな飴玉や、たくさん並んだプラスチックケースの中には銀紙で包まれたチョコや、カラフルなグミなど。
「すごい、ここってお菓子の王国なんだ!」
思わず出てしまった声。
パッと振り向く少年たち。
にこやかに目を細め蒼角を見る駄菓子屋店主のお婆さん。
蒼角は少しだけ恥ずかしそうに顔を赤らめて俯いた。
「ねえちゃん駄菓子屋初めてかー?」
「あれ、お姉ちゃんなんか見たことある!」
「お姉ちゃんお姉ちゃん、これ、美味しいよ!」
少年たちが蒼角に群がっていき、蒼角はあわあわと慌てふためいた。
「お嬢ちゃん、何でも好きなもの買って行きなさいな。どんなのが食べたいんだい?」
店主のお婆さんにそう言われ、蒼角は「えーっと……」と辺りをきょろきょろとした。
「蒼角ね、お金がちょびっとしかないから……うーんと……あっ」
店内の端に目を留めた蒼角は、何か閃いたように顔色を明るくさせた。
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