#1 お薬とお菓子 - 2/3

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 あまり馴染みのない街中を歩き、目当ての場所へと辿り着く。

 蒼角はその外観を見て「ふわあ……」と感嘆の声を上げた。

「だ・が・し・や……これが、ダガシ屋さん! 前にプロキシが教えてくれたけど、ダガシって、少ないディニーでも買えるお菓子なんだよね」

 初めてのお店を前に、少しだけ入るのを躊躇(ちゅうちょ)する蒼角。

 そんな蒼角の横をすり抜けて、小さな子ども数人がお店の中へと入っていった。

 ──ガラララッ

「おばちゃーん! 1ディニーチョコ頂戴!」

「俺は3ディニーラムネ!」

「僕はね、僕は~……」

 男の子たちの楽し気な声が聞こえてきて、蒼角は胸をドキドキとさせる。

「蒼角よりも小さい子たちが入れるお店なんだ、それにほんとにすっごく安いお菓子が買えるみたい……! よし!」

 手に持つお財布をぎゅっと握り締め、蒼角は駄菓子屋へと入っていった。

 中へ入れば、狭い店内の中にたくさんの種類のお菓子が並べられていた。籠の中に乱雑に入れられた小さな飴玉や、たくさん並んだプラスチックケースの中には銀紙で包まれたチョコや、カラフルなグミなど。

「すごい、ここってお菓子の王国なんだ!」

 思わず出てしまった声。

 パッと振り向く少年たち。

 にこやかに目を細め蒼角を見る駄菓子屋店主のお婆さん。

 蒼角は少しだけ恥ずかしそうに顔を赤らめて俯いた。

「ねえちゃん駄菓子屋初めてかー?」

「あれ、お姉ちゃんなんか見たことある!」

「お姉ちゃんお姉ちゃん、これ、美味しいよ!」

 少年たちが蒼角に群がっていき、蒼角はあわあわと慌てふためいた。

「お嬢ちゃん、何でも好きなもの買って行きなさいな。どんなのが食べたいんだい?」

 店主のお婆さんにそう言われ、蒼角は「えーっと……」と辺りをきょろきょろとした。

「蒼角ね、お金がちょびっとしかないから……うーんと……あっ」

 店内の端に目を留めた蒼角は、何か(ひらめ)いたように顔色を明るくさせた。

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