#2 サボりと肩の重み - 1/5

「あーあ、なんてこった」

 人一倍大きなため息を吐き、

 腰に手を当て頭を抱え、

 眉間に皺を寄せる。

 浅羽悠真は、とても具合が悪そうな人間を装うようにして壁にもたれた。

「どうしたの、ハルマサ!」

 蒼角が訊く。

 自分のデスクに座る星見雅も、少しばかり気にしたように耳をぴくりとさせていた。

「いやー、ちょっとふらっとしちゃって。しかもいつも常備してたお薬がね、なんと、足りなくなりそうなんだよ! これは今すぐにでも薬局へ買いに行かなきゃあならないよねぇ……このこと副課長に言ってからじゃないと、外出は厳しいかな? いやでも、副課長は今さっき一課に呼ばれて出ていったばっかりだし、なかなか帰ってこれないよねぇ……あー、今すぐにでも、早々に、薬局へ向かわないと僕はそのうち倒れてしまうかもしれないな~あ~?」

 ちらり。

 悠真の視線は六課の課長である雅へと向く。

 彼女は気づいたように悠真と視線を合わせる。

「薬が必要ならば、買いに行け。何、柳が戻ってくるまでに席につく修行だと思えば良い」

「そーですよねぇ~? 願わくば、副課長があと二、三、四から五時間は帰ってこないことを祈るところかな~なんて」

 ハハッと軽く笑い、悠真は財布片手に出かける支度をする。

「じゃ、僕いってきま──」


 が、

 それを制するかのように蒼角が彼の前に立ちはだかった。

「ハルマサ、具合が悪いなら寝てなきゃだよ! お薬なら蒼角が買ってきてあげる! 何買って来たらいい? ちゃんとメモしていくよ! あっ、でもお金は先にもらってもいいかなぁ……蒼角のお財布全然お金入ってないや……」

 自分の財布の中身を確認しながらしょんぼりとしている蒼角に、悠真は一瞬動きを止める。

「いやー、蒼角ちゃん。僕のお薬たくさん種類があって複雑だからさぁ、僕が買いに行かないと」

「それじゃあ蒼角、一緒についてくよ! ハルマサが途中で倒れちゃったりしたら心配だもん! ね、いいでしょボス!!」

 蒼角が懇願するように言うと、雅は蒼角と悠真を見比べ、「ふむ……」と呟いた。

「二人とも、早く帰ってくるように努めろ」

「わかってるよボス! ナギねえに怒られない為にも、ハルマサのお薬買ったらびゅーんって急いで帰ってくるから!」

 蒼角がそう言うと雅はこくんと頷き、自分の仕事へと戻った。悠真はというと、少々残念そうに肩を落としたが、気持ちを切り替えたのか腕を組み「それじゃ、僕が倒れないように見張っててね蒼角ちゃん」と六課を後にした。

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