大声で泣く子ども。
身を寄せ合うカップル。
しきりに電話をかけようとするスーツ姿の男。
どこかで警報が鳴っている。
何かをしきりに叫ぶ声。
通信が遮断されたテレビが暗闇を映す。
ひりつくような、肌で感じるホロウの感覚。
イアス越しとは違う生身の恐怖感。
このまま体が浸蝕されて、
エーテリアスになったとしたら。
「……はあ」
一息吐いて、ゆっくりと歩き出した。
「皆さん、どうか落ち着いて。治安局は今頃僕たちを救出しにここへ向かっているでしょう。できる限り固まって、エーテリアスに気づかれないよう静かに待つんです」
僕の声が聞こえた者たちは、怯えながらもその場に留まる。
聞こえなかった者たちにも、僕は再度同じ言葉を繰り返した。
「皆さん、どうか落ち着いて」
僕はまるで手慣れた治安官かホロウ調査員でもあるかのように、声をかけて回る。以前、リンがホロウに飲み込まれた時のことを思い出した。きっと彼女も、こうやって市民を誘導していたことだろう。さて、どのくらいで助けが来るか。時計を確認して、リミットを計算する。
「何事もないといいんだけど」
そう言いながらも遠くでエーテリアスの声を耳にした僕は、『何事』かを想像して頭を痛めた。
「……まずは他の巻き込まれた人たちを探してみよう。最悪の結果にならないように」
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