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「おにーちゃん私のシャンプー切れそうかも~」
「おっと、これから買ってこようか?」
浴室から聞こえてきたリンの言葉に、脱衣所兼洗面所からアキラが返す。
雑貨店141は24時間営業の為、いつでも買い物ができるのは大変魅力的だ。そしてリンの普段使っているシャンプーも置いているのは評価ポイントが高い。
「えー、それなら私も一緒に行く~」
「別に僕一人でも買ってくるけれど」
「だってお兄ちゃん、さっきのアイス溶かしちゃったじゃん! すぐ冷凍庫に入れないからー!」
「うーん……溶けても袋に入ってるわけだし、ちゃんと今は冷凍庫で凍ってるから大丈夫だよ」
「そーゆー問題~!?」
ガラッと音を立てて浴室のドアが開いた。
シャワーを浴び終えたリンが顔を覗かせている。
「でも外に出ちゃったらまた汗かいちゃうよね」
「そうだね、だから僕が一人で……」
「ね、お兄ちゃん。
エアコン修理してもらえるのは明後日だし、
明日もお店が暑いまんまなら、
一日閉めちゃってた方がいいと思うんだぁ」
「?」
「どっちにしろ汗かいちゃうんなら
一日ずーっとわたしの相手、してくれてもいいんだよ?」
浴室のドアの陰から、リンの豊満な胸が覗く。
花弁を散らしたような赤色が点々とそこにある。
アキラは自分がきつく吸い上げた痕を見つめながら
顎に手を添え唸った。
「……リン、暑い上にそう何度もシているとそろそろ僕の身体が悲鳴を上げそうだ」
「んもー! お兄ちゃんの貧弱~~~!!! もっと体力つけてよ~!!」
「うーん、最近はだいぶ体力もついたと思っているんだけどね」
肩をすくませるアキラに、リンはげんなりとしながら浴室の扉を閉めた。
アキラは手に持っているリンのアイスでべたついた衣服を、水で洗い流して汚れを落としている。
「まあでも、今夜もう一度くらいは僕の相手をしてくれると嬉しいかな」
──浴室の扉を一枚隔てたリンの耳には、その小さな呟きは届いていそうになかった。
<了>
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