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後日、無事有休が取れたセスはジェーンに連絡すると、待ち合わせにとある場所を指定された。ルミナスクエアの次に栄えていると言われている街だ。
夕刻になってその街を訪れたセスは、人通りの多さに圧倒された。
「飲み屋も結構あるな。この辺りは確か、犯罪件数も多いことで有名だが……」
そこでセスは一人、この街のランドマークであろう背の高い前衛的な形をしたオブジェが中央に飾られている噴水の前に立っていた。
「……あっ、ジェーン先輩!」
見知った顔が近寄ってきたことに気づき、セスは手を振った。ジェーンはセスを一目見て、口元に手をやり考えるように小さく唸っている。
「ジェーン先輩?」
「私服を着てきてと言ったわね」
「はい、着てきましたけど」
ジェーンはセスの首元から足元までを見て往復し、視線を顔に戻す。
「ジャージじゃない。ランニングでもしに行くの?」
「いえ! この格好の方が動きやすいかと思いまして。治安官の制服でもいいと思ったんですけど、さすがにそれは怒られるかなって……」
「そりゃ怒るわよ、ジャージでも」
「ええ??」
ジェーンはため息を吐くと、セスの手を引いた。
「まあどっちみち着替えをさせるつもりではあったから、いいわ、行きましょ」
「どこにですか?」
「そこのファッションビルよ」
――ジェーンの連れて行った先はそのファッションビルの中でも一際高級そうなスーツ店だった。
「店員さん、この子を素敵な紳士にしてくれない? 今日これからデートなのよ」
「デッ!?」
「かしこまりました」
どういうことですか先輩! と叫ぶセスをよそに、ジェーンは「アタイは別のフロアで服見てくるからここで待ってなさいね~」とひらひらと手を振って行ってしまった。
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