──小さい子。
その言葉は、一瞬にして自分を病室のベッドの上へと引き戻させる。
繋がれた点滴の管。
薬品臭い部屋。
優し気に佇む師匠。
「……な、に」
どくどくと脈打つ体。
冷や汗がたらりと垂れる。
力が抜けて、
その場に膝をついた。
「え、ハルマサ!? もしかしてわたし、なんか変なこと言っちゃった!? ご、ごめんねハルマサ! 怒らないで!」
「いや……怒ったりはしてないよ」
「でもでも、すごく怖がってるでしょ!?」
「ええ……? ちが、ちがうよ。全然、僕は……」
──怖がってる。
──この子の目は、幼い僕を見ている。
──怖がってる。
──怖い。
──見ないで。
まるで稚児がそうするように、
手を伸ばした。
「わっ」
小さな蒼角の身体を、悠真は自分へと引き寄せる。
ぎゅっと、きつく、抱きしめる。
強く、強く、強く。
「──んんっ、は、ハルマサ! 痛いよ! 放して!」
「……見ないで」
「えっ?」
「見ないで見ないで見ないで」
「ハルマサ、何言ってるの?」
「僕のこと、見ないで……!」
「本当の僕なんて
弱くて醜い僕なんて、
……誰も、見ないで」
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