──主人公はホームレスの少年。
ある日ゴミ捨て場に捨てられたボンプを見つけるところから話が始まる。そのボンプを修理してどうにか使えないかと試行錯誤しているうちに、磨き上げたボンプが奇妙な光を放つ。そのボンプは起動するなり、
『あなたの願いを3つまで叶えます』
と言うのだ。訝しみながらも少年は「大金持ちになりたい!」と言う。その途端、ボンプの腹部がパカッと開き、そこから大量のディニーがなだれてきた。
「急にお金持ちになっちゃった!」
蒼角は驚きで目をまん丸にしている。そして持ってきていた棒付きキャンディーをぺろりと舐めた。
──心根の優しい少年は結局手に入れたディニーのほとんどを同じくホームレスとして苦しんでいる人々に使ってしまった。手に残ったのは数枚のディニーだけ。次に少年が願ったのは「たくさんのご飯が食べたい!」またボンプの腹部がパカッと開き、そこからいくつもいくつも様々な料理が湧いてくる。少年は目を輝かせ、周囲にいたホームレスたちと一緒に食事を分け合って食べた。
「蒼角もたくさんご飯食べたい! でも、この量じゃ蒼角ひとりで食べきっちゃうかも……」
蒼角はそう言うと、大きなマシュマロを口の中に放り込んだ。それから悠真にもそのマシュマロを「はい」と手渡す。無意識にもらってしまった悠真はそれを口に入れ、「ヴッ……めちゃくちゃ甘いなこれ」と苦笑いした。
──そして最後の願い。
『次は? 次は?』
と急かすボンプに、少年は恥ずかしそうにしながらも、
『……恋がしてみたい』
と言った。ボンプはしばらく少年を見上げていたが、急に光を放ったかと思えば──姿を消してしまった。
少年はボンプを探した。
一体どこへ行ったのか。
探して探して、遠くの通りまでやってきた時。少年は花屋に立つ一人の少女に恋をする。そして少年はその少女に振り向いてもらう為、必死に仕事を探し、お金を貯め、長い時間がかかってしまったが花屋へとまたやってくる。花屋の少女は美しい女性へと成長していた。そして少年はホームレスではなく、町工場で働く青年へと成長していた。青年は花屋へと通い、いつしか彼女と結ばれることになる。
『あなたが小さなホームレスだったこと知ってるわ』
『どうして』
『私もあの時あなたに恋をしたからよ』
そうして女性は青年に顔を寄せ──
「……っ!」
思わず、悠真は蒼角の顔を右手で覆った。
体が動かないよう、左手は蒼角の左肩を抱いて。
「え!? 何!?」
「いやそのー」
「蒼角なんにも見えないよ~!!」
「もうちょっと待って」
「ハールーマーサー!!」
怒った蒼角は悠真の手を掴み、そのまま上へと持ち上げどけた。そうしてようやく見えた画面。
映っていたのは、
ベッドの上で体を寄せる男女。
「………わ」
両者とも服を着ていて致してこそいないものの、その情熱的なキスは子ども向けとは言い難い。
息遣いは荒く、
執拗なまでのリップ音が響く。
蒼角はそれから目を反らせずにいる。
ぽかんとしてる、というのが正しいかもしれない。
その隣で悠真は「あちゃー」と額に手を当てていた。
結局そのシーンはそのあとすぐに終わったのだが、そこから蒼角も悠真も無言になってしまった。
──そして作中のふたりは仲睦まじく暮らしていく。そんなある日、主人公は自宅近くのゴミ捨て場で捨てられたボンプを見つける。どこかで見たそのボンプに、主人公ははっとする。持っていたハンカチでごしごしと磨くとボンプは途端に起動する。
『あなたの願いを3つまで叶えます』
主人公はほっとしたように肩を落とし、ボンプをぎゅっと抱きしめた。
『願いは1つだ。君に友達になってほしい』
作品は終わりを迎え、エンディングロールが流れた──。
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