「今日は久々の休みだぜ! 何してこよっかな~、やっぱゲーセンは外せないだろ? あとは娘たちの為にもオイル買いに行ってー、それからそれから~……」
「ビリー! 昨日はお疲れ様!」
うきうきと休日の予定を立てているビリーの背後から声をかけたのはニコだ。いつもならこのタイミングで話しかけられるのは急な仕事の件だったりする為、ビリーはびくついた様子で振り返った。
「な、なんだニコの親分。まさかこの15連勤をやり通した俺に追加の仕事なんて言わねぇよな?」
「言わないわよ、馬鹿ねぇ!」
その続きに、「――今日は」と言ったのをビリーは聞き逃さなかったが、ひとまず休みが保障されたようで安堵した。
「ほらビリー、仕事頑張ってくれたボーナスにこれをあげるわ」
「ボーナス??」
ニコが差し出したのは小さな紙切れ。受け取ってよくよく見れば、それはホビーショップ<BOX GALAXY>の5%OFFクーポンだった。
「ホビーショップのクーポン?? ニコの親分、これじゃボーナスってさすがに言えねぇ気が……」
「何言ってるのよ! もしこれを使って1個500ディニーするブラインドボックスのフィギュアを20個買ってごらんなさい! クーポンを使えばあら不思議、1個はタダになるのよ!? しかもシークレットが当たった日にはそれを転売すれば元の倍以上のディニーが舞い込んでくる! こんな素敵なボーナスがもらえるなんて百回あたしに頭を下げてもいいくらいだわ!」
「言われてみれば確かにそんな気もしてくるけどよぉ……でもこれ今日までだぜ~?」
「つべこべ言わずにそれ持って行きゃあいいのよ!」
どん、と尻を蹴とばされ、ビリーは邪兎屋の事務所を追い出された。
「どわわわっ、何すんだよ親分……!」
「それじゃ、優雅な休日を送って頂戴ね~」
ばたん、と事務所の扉が閉まる。まだ出かけるつもりはなかったが、こうなっては仕方がないとビリーは体を起こした。
「んだよ~、俺は今次のスタナイの限定ボックスの為に貯金中だってーのにホビーショップで散財なんてできっかよ」
不貞腐れ、ため息を吐きたくなる。しかし手に握ったクーポンを見てビリーは唸った。
「ま、今日は一日休みだし……ちょっとぶらつくのも悪くないよな」
これも何かの縁ってやつだろ、とビリーは六分街へと足を運んだ。
※コメントは最大500文字、5回まで送信できます