――ちゃぷん、とお湯が揺れる音が響いた。
蒼角ちゃんの手には、もこもことした白い泡。
それに「フゥーッ」と息を吹きかけて吹き飛ばし遊んでいる。
「……見て見てハルマサ!」
「ん?」
「ツノにあわあわくっつけた!」
彼女は楽しそうに笑いながら、浴槽から少し這い出て鏡の前へと身を乗り出している。
――ここは浴室。
当たり前だけれど服を着たまま風呂に入る人間はいない。
鬼族も同様にそうだろう。
蒼角ちゃんは生まれたままの姿でそこにいて、
僕もまた、裸で泡まみれの浴槽に浸かっている。
――ざぷんっ、とお湯が大きく跳ねた。
蒼角ちゃんが勢いよく体を沈めたんだ。
そしてまた泡で遊び始めると、何かに気が付いたように目をぱちくりとさせる。
「ねぇねぇハルマサ」
「何?」
「あのねー……
わたしのお尻に
ハルマサの硬いの
当たってるよ?」
「…………ごめん、気にしないでくれるかな」
狭い浴槽の中で、どうにか体を離そうと僕は身を捩った。

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