#5 夢の中で - 1/5

 ――その日、わたしはとってもおかしな夢を見たの。

 いつものお仕事のデスクに座ってたわたしの前に、突然ゴハンがいっぱいあらわれて!
 牛丼に、カツ丼に、親子丼、それに天ぷらうどんにカレーそば!
 あとあと、麻婆豆腐に青椒肉絲、回鍋肉と、たっぷりエビチリ!

『すごーい! 食べても食べてもいっぱい出てくるよ!?』

 デスクの上から全然なくならないゴハン!
 こんなに素敵な夢、絶対さめてほしくない~~!
 って、思ったんだけど。

『……あれれぇ、なんだか視界が変な感じ』

 食べ始めた時よりもね、食べ物との距離がちょっと離れた気がするの。
 よくわかんないけど、
 背が高くなった、みたいな……?

『あれ、あれれぇ?』

 少し下を見ようとしたらね
 わたしの体が変なことに気が付いたの。

『わたし、おっぱいおっきくなってる!?』

 びっくりして立ち上がったら、おっとっと、ってよろけちゃった。
 だって体が重いんだもん!
 もしかして、ナギねえもいつもこんなふうに体がおもたーいって思ってたのかな!?
 だって今のわたし
 ナギねえみたいにとってもおっきなおっぱい。
 それにお尻も、ちょっとおっきくなった気がする……?

『もしかして、ゴハンをいっぱい食べたから、わたし、おっきくなったのかなぁ……』

 いつもはたくさん食べても体大きくならないのにどうして?
 あっそうか、これは夢だから!
 って、思ったらホッとして、わたしはまたゴハンを食べ始めたの。
 夢だからいくら食べてもなくならないんだもん!
 もぐもぐぱくぱく!
 
 そしたらまた胸がおっきくなった気がして。

 わたしの体、どうなっちゃったんだろー。

 そう思ってたらね
 隣に、ハルマサが立ってたの。

『あれぇ? ハルマサ?』

 わたし、夢でもハルマサに会えたのが嬉しくなって、椅子からぴょんて立ち上がってハルマサにぎゅーってしたの。
 でもでも、おっぱいおおきすぎて、ぎゅーするのにちょっと邪魔だったなぁ。

『ハルマサぁ……蒼角、なんか急におっきくなっちゃった!』

 おっぱいをむぎゅむぎゅって両手で揉んで見せたら、ハルマサ苦笑いしてた。
 それでね、すっごく困った顔をするの。

『蒼角ちゃん、大きくなっちゃったの?』
『そうなの、ゴハン食べたらね、おっきくなっちゃった』
『そっかぁー……あーあ、僕、小さくて可愛い蒼角ちゃんが好きだったのになぁ……」
『え!?』
『大きくなっちゃった蒼角ちゃんとは恋人になれないよ』

 ハルマサはおっきなため息をついたら、そのまま後ろを向いて歩いてっちゃったの。
 わたし、こわくてこわくて、一生懸命追いかけた。
 それなのに全然ハルマサに追い付けなくて
 だから
 涙が出てきて

『や、やっ、やだよぉ! ハルマサ! 行かないで! ハルマサ~~~!!!』

 ――布団から飛び起きた蒼角は、やわらかいものにぶつかった。

「!?」

 見ればそこには、
 大きな胸。

「蒼角、どうしたんですか? うなされてたみたいですよ?」

 大きな胸――もとい、月城柳が心配そうに声をかけた。
 蒼角は悪夢にうなされていたらしい。
 しばしの間茫然としていた蒼角だったが、夢の内容を思い出したのかほろほろと涙をこぼし始め――

「そ、蒼角!?」

「うわあああああんっ! おっきいおっぱい怖いよー!!」
「!?!?」

 蒼角の泣き声がこだました――。

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