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目を覚ますと、目の前には心配そうなリンが涙をあふれさせながらそこにいた。
「お兄ちゃん!」
ぎゅうっ、と首元に抱き着かれて僕は息苦しさを感じる。
「リン……苦しいよ」
抱きしめられながら、ここが病院だということに気が付いた。
大部屋で、多分他にも人がいるのだろうけれど、カーテンで仕切られていて見えない。
「起きなかったらどうしようって思った」
「そんなわけないだろ?」
「でも、もし浸食がひどかったらって、どうしようって」
鼻水を啜 る音が聞こえる。
泣きじゃくる妹の背中を撫でていると、ふと、幼い妹と僕の記憶が脳裏をかすめた。
幼かった僕と妹。
今はお互いに成長して、でも、こうして抱き合っている。
言おう。
僕がこれ以上おかしくなってしまう前に。
君をこんなにも愛してるって。
ようやく離れたリンの泣き腫らした表情を見て、笑いが込み上げてきた。
ああ、なんて可愛いんだろうか僕の妹は。
「ふふっ」
「……お兄ちゃん?」
リンの髪を撫でて、頬を伝った涙の痕 を拭う。
「リン」
「何?」
「愛してるよ」
掠 れた声で、君だけに聞こえるように伝えた。
「リンのこと、愛してる」
どんな反応をするだろう。
軽蔑するだろうか。
驚いて、僕をひっぱたくだろうか。
さあなんでも来い。
そんなことを考えたのに。
リンは涙を止めて、僕の頬を両手でぱちんと挟むと
「私も!!!!!」
そう大声を上げ、
僕に口づけをした。
「……?? えっ」
「私も、お兄ちゃんのこと愛してる!」
「いや、リン――」
ぐだぐだと僕が言う前に閉じてしまえとでも言うのか、
リンはまた僕に口づけをした。
――どうやら全て、僕の杞憂だったらしい。
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