ビデオ屋の裏にある駐車場に車を停め、エンジンが停止した。
静かになった車内で、二人はすぐ降りようとせずに座ったまま。
「……リン」
「ん?」
「手を握ってもいい?」
「こないだは聞かないで握ってきたじゃん」
「そうだったっけ?」
記憶にないと視線を逸らすアキラにリンは呆れたように笑う。
「はい、どうぞ」
リンは右手を差し出した。アキラはそれを左手で握る。
「はあ……」
ため息を吐いて、アキラはシートに頭を預けると目を閉じた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「……おかえり」
「うん、ただいま」
しばらく手を繋いだままで、ふたりは互いに沈黙を許した。
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