「一週間の出張!?」
悲鳴にも似た声が六課オフィスに響き渡った。
叫んだのは六課のサボり担当、浅羽悠真である。
「ええ、H.A.N.D.とホロウ調査協会で行う勉強会に各課から一人出なければいけないんです。」
「副課長が行けばいいじゃないですか」
勉強会の詳細についてまとめられている書類を柳が手渡すと、悠真は嫌々それを受け取った。
「はい、本来なら私が行くべきなんですが……ここ二、三日はどうしても外せない業務があるのでそれだと出張に間に合わなくて」
「いつからです?」
「明日からです」
「明日ぁ!?!?」
再度、泣き声が混じるような声が六課オフィスに響き渡った。
「ハルマサどこにおでかけするの~?」
自分のデスクからひょっこりと顔を覗かせた蒼角に、悠真は何かぴんと来た様子で急いで駆け寄り蒼角の両肩を掴んだ。
「そうだ蒼角ちゃん! 蒼角ちゃんだって一緒に勉強会に連れていけばいいですよね!」
「まさか浅羽隊員、蒼角に出席してもらってその間自分はサボろうと……?」
「ちょっ、ち、違いますってぇ~! だってほら、僕は蒼角ちゃんに一日でも会えないと寂しくて寂しくて死んじゃうんですよぅ」
しくしくしく、と泣き真似をする悠真に、柳は笑顔を引き攣らせた。
「そうだ課長! 課長が行けばいいじゃないですか! こういう時の六課代表でしょう!」
悠真の矛先がびゅんっと雅へと向かう。刀の手入れをしていた雅は小さく息を吐くと目を細めて悠真を見た。
「すまない悠真。私は柳に一日でも会えないとこの無尾が爆散する修行をしているゆえ」
「それ修行じゃなくて呪いじゃないです!?」
「修行だ」
端から出張へ行く気の無さそうな雅の様子を見て、柳は呆れたようにため息を吐いた。
「課長は……適任ではありませんから。そして蒼角も勉強会という性質上不向きかと。浅羽隊員、よろしくお願いします」
「そんなぁ~。それじゃあ蒼角ちゃんを僕の抱き枕っていう名目で連れていくのは……」
「動機が不純すぎます、却下です」
「ええ~」
しょんぼりとした悠真は、蒼角を後ろからぎゅうううっと抱きしめている。身動きが取れなくなった蒼角は悠真の様子を見て、よしよしと頭を撫でてあげた。
「……シュッチョーって、ただのお出かけじゃないんだぁ」

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