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ルミナスクエアにある繁華街は週末になると更に人で賑わう。
仕事上がりに飲みに来る会社員たちは意気揚々と店へと入っていき、洒落たバーへ入っていくカップルも少なくない。
そしてそんな中、人気の居酒屋へと多くの人間たちが吸い込まれるように入っていった。
今日は貸し切り営業、入っていくのはもちろんH.A.N.D.で働く者たちだ。
「はあー、なんでこういう時って定時より早めに上がらせてもらえたりしないんですかねぇ。わざわざ飲み会参加するんだからちょっとは余裕がほしいもんですよ」
店の前で悠真が肩を落としている。
他にも雅や柳、そして蒼角が一緒に来ていた。
仕事後に六課全員で直行した次第である。
「ハルマサ、美味しいゴハンが待ってるんだよ! 早く行こ!」
「蒼角ちゃんの胃を満足させられるだけの料理は果たして出てくるのかねぇ~」
「蒼角、他の人たちの分もあるんですから食べ過ぎちゃいけませんよ?」
「皆、早く中へ行こう。メロンが待っている」
新人歓迎会の開始時刻は十九時から。
もうすぐだ。
中へ入ると、幹事である柳は店員へ話しかけ、何か打ち合わせをしていた。
他の店員に案内され雅、悠真、蒼角の順で奥へ進んでいく。
大広間にはたくさんのテーブルが並べられ、取り皿やコップ、瓶ビールなどがすでに置かれていた。
一番奥の方のテーブルに『六課』と書かれた札が置かれている。
そこが彼らの席らしい。
他の席には別の課の人々がすでに半分ほど座っていた。
「蒼角ここね!」
上機嫌で六課のテーブルに着くと、蒼角は上着を脱いだ。
悠真はその横に座り、対面には雅が座る。
どうやら柳の席は雅の横のようだった。
「今日は何食べれるかなぁ~!」
「この店なら鍋がメインなんじゃないかな」
「ハルマサ、食べに来たことあるの?」
「んん~まあ何回かは~」
「何鍋かなぁ、闇鍋かなぁ!」
「闇鍋は普通お店で出てくるもんじゃないんだよ」
悠真が苦笑いをすると、蒼角はきょとんとした顔で首を傾げる。
彼女にとって闇鍋は『楽しくて美味しいお鍋』なのだ。
「――む、柳よ」
「はい、なんですか課長?」
打ち合わせが終わったのか席へと遅れてやってきた柳に、雅は話しかけた。
「メロンはいつ出てくるだろうか」
「もう、デザートは一番最後なんですよ?」
「むぅ」
少しだけ唇を尖らせる雅に、柳は肩を竦めてみせる。
そして思い出したように脱いだ上着のポケットの中を探ると、飴を一つ取り出した。
「メロン味のキャンディを買ったんでした。食べますか?」
「メロン味……」
うっすらと笑みを浮かべ、雅は「いただこう」と一粒受け取る。
それを見ていた蒼角も「わたしも食べたーい!」と元気に手を挙げた。
そんなやりとりをしていると、徐々に残りの参加者も集まり始めた。
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