#3 あわあわお風呂にいっしょに入ろ! - 2/5


 ***

 ――事の発端は買い物中に蒼角ちゃんがそれを見つけたことによって起こった。

 僕たちはマンションから少し離れたスーパーに買い物に来た。
 僕が食材を選んでいる間、いつもならお菓子コーナーで明日食べるおやつを選んでいる蒼角ちゃんが、今日に限って違うコーナーにいた。

「蒼角ちゃん、何見てるの?」

 近づいて声をかけると、彼女はぱっと振り返って嬉しそうに僕を見上げた。

「ハルマサ~、これ!」
「何?」

 彼女の手元にあるのは掌より少し大きめの袋に入った何か。
 よく見ればボンプのようなキャラクターの絵が描かれている。

「バスボンプボムだって!」
「なにそれ」
「にゅーよくざい!」
「入浴剤? へぇー、これ泡風呂になるんだ」
「ねねっ、これ使いたい!」
「んー別にいいけど」
「それでいっしょに入ろ!」
「え」

 一緒に入ろう、と言われてしばし頭の中で想像してみる。
 あわあわもこもこになった風呂、
 うちの狭い浴槽にふたり。
 はしゃぐ蒼角ちゃん。
 微笑ましいけど、腕を組み唸ってしまう。

「うーん、僕と入ると窮屈なんじゃない?」
「そうかなぁー」
「そうでしょー」
「でもくっついて入れば大丈夫だよ! せっかくあわあわおもしろそーなのに蒼角ひとりなのつまんないもん!」
「つまんないことはないと思うけどね~? ……まあ、蒼角ちゃんがそうしたいならそうしようか」
「やったぁ~!!」

 ぴょんぴょんとその場で飛び上がると、蒼角ちゃんは手に持っていた入浴剤をカゴの中へと入れた。
 そして思い出したようにお菓子コーナーへと向かう。
 その後ろをついて歩きながら、僕はふと考えた。

 付き合ってからだいぶ経って、
 ――お互い裸も、その、見慣れたし。
 風呂ぐらいどうってことない、

 よ、ね……?

 そう考えてカゴの中の入浴剤を見つめる。

 
 ――泡風呂。

 そうだ、泡でいっぱいの浴槽に浸かるなら、まじまじと互いの裸を見るわけでもなし。
 そう変な気分にもならないでしょ。
 いや、別に変な気分になったとしてもシちゃいけないわけじゃないし……
 って違う違う!
 蒼角ちゃんはただ遊びたくて一緒に風呂入ろって言ってるだけなんだから
 やましい気持ちでいちゃだめだろ……

 うん、大丈夫。

 ま、別に気にするほどのことじゃないでしょ!

 と、思っていたのに。

 気にしないでいられるわけはなかった。

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