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結局蒼角ちゃんは遊びに夢中で僕の雄の本能を放っておいてくれ、
僕もまたどうにか気持ちを逸らしてしばらく時間が経った。
「お湯ぬるくない? 風邪引くかもよ」
僕がそう呟くも蒼角ちゃんからの返事は遅く、何に夢中になっているんだと思った時だった。
とん、
と僕の胸に蒼角ちゃんの頭がぶつかった。
「?」
つぶっていた目を開けてみると、蒼角ちゃんが僕の身体にもたれかかっている。
「蒼角ちゃん?」
名前を呼ぶが、返事はない。
どうしたのかと思って肩に手をのせる。
「……ハル、マサぁ」
「っ! え、何?」
「………」
少し身を捩るようにして、
蒼角ちゃんの身体がこちらを向く。
柔らかい肌が僕の胸板に擦れた。
落ち着いたはずの下半身がまた起き上がろうとしている。
いや待て。
起きなくていい。
起きなくていいんだけど。
だって風呂場にまでゴムなんて持ってきてないわけだし。
このままだと……
って、
やめろやめろ考えるな僕!
「そ、そうかくちゃ――」
「ハルマサ、わたし……………眠くなっちゃった」
「………………ん? え?」
蒼角ちゃんは目を瞑り、僕の胸にもたれかかって――寝ている。
「いや寝ちゃだめだよ!? ここ風呂!!」
「うう~ん」
「遊び疲れて寝るんじゃありません!」
「すぅ……すぅ……」
「ちょっ……こらーーー!!!!」
近くで大声を出すも、蒼角ちゃんは身動きせずにすやすやと寝息を立てている。
ほっぺをぐにぐにとつつく、
肩を持って揺らす、
何をしても起きようとしない彼女に僕は呆れてしまう。
なんで急に寝るんだよ……いや風呂に入ってると眠くなる気持ちもわからなくもないけど……。
「はあ……このままここで寝てても風邪引くし、連れてくしかないか」
僕は蒼角ちゃんを起こすことを諦めて彼女の身体を持ち上げた。
とりあえず泡を流さなきゃと思い、抱きかかえたまま二人いっぺんにシャワーを浴びる。
蒼角ちゃんは抱えられていることに気が付いたのか、僕の首にしがみついた。
「起きて自分で風呂から上がってくれると嬉しいんだけど?」
「うーん……えへへぇ、ハルマサ~」
寝ぼけているのかなんなのか。
嬉しそうに頬擦りをして、くたりともたれかかった。
……全くこの子は。
扉を開けて、僕たちは浴室を出た。
「――ま、君のお守りも嫌いじゃないけどね」

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