#8 海へ行こう! - 2/4


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「着いたぁ~~!」

 駅から出て少し歩くとようやく『ファンタジィリゾート』に辿り着いた。海辺のリゾート地は波の音が心地良い。
 二人は土産屋で華やかなアロハシャツを買い身にまとい、すぐ傍にあったまばらに魚が泳ぐ水族館を眺め、蟹の形をしたクロワッサンを頬張ると、浜辺へと降りていった。

「人! あんまりいないね!」

 蒼角の言う通り、どこを見ても客は少ない。海に入って遊んだりアトラクションの受付に並ぶ人影はいくらか見えるが、数名程度。今が絶好の時期のはずのリゾートとしては芳しくないのは見て取れる。この様子ではホテルに泊っている客も少ないのだろう。

「最近結構盛り返してきたらしいんだけどね~、なーんかここ数日で良くない噂が流れてるらしくて。人がいないのはそのせいかな」

 悠真が説明すると、蒼角は「ふぅん」と言いながら先ほど買ったばかりのサンダルで砂を蹴りながら海へ近づいて行った。
 ザザァ、
 ザザァ、
 と音を立てる波に手を伸ばしてそっとすくっている。

「人がいーっぱい来たら、きっともっと楽しいのにね~」
「そうだねぇ」
「でもでも、人が全然いない今こそ遊び放題ってことだよね!」
「ん?」
「あっちのサーフィンも、そっちの射的も、全然待たなくていいってことでしょ!?」

 わーい、と嬉しそうに両手を広げると、その時ちょうど蒼角の足元まで波がザパァと流れてきた。悠真もその横に並んで二度目の波に足を打たれる。引いていく波を見ながら、砂が少し沈んだ波の跡を足で踏んで感触を確かめる。

「そうだねぇ、今日はめいっぱい遊んじゃおっか」
「うん! それじゃーまずはどれにしよっか!?」
「釣りがしたいんじゃなかったっけ?」
「そーだった! ……でもでも、釣った魚は、その場で食べてもいいのかなぁ……?」
「ダメじゃないかな、しかも蒼角ちゃんが言ってるその場でってのは『生で』ってことでしょ……。何より釣れた魚はリリースが基本だと思うけどね」
「え!? 食べちゃダメなの!?」

 ガーン! とショックを受けた表情をする蒼角を見て、悠真は口を大きく開けて笑った。

「お腹減ってるんならさっき見かけたカフェでご飯食べさせてあげるって!」
「ほんと!?」
「ほんとほんと。だからまずはしっかり遊んでこようか」

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