#8 海へ行こう! - 4/4


 ***

 帰りの電車、車窓の外は真っ暗。
 蒼角は疲れたのか悠真の肩に頭を寄せて寝ている。

「あーあ、よだれ垂らして寝ちゃって。まったく」

 そして左ポケットからハンカチを取り出して、それを拭った。
 綺麗になった蒼角の顔を見て、悠真は小さくため息を吐く。


 ──タタン、タタン。

 ──タタン、タタン。


 電車の規則的な音が、少しだけ彼を眠りに誘う。
 抗う必要もなく目を瞑れば、今日の海辺での蒼角を思い出した。


(とっても綺麗だった)

(僕の走馬灯にいろんな君が映し出されてくれるなら、僕は何も怖いものなんてないな)

(あんなにも美しい景色なら、死ぬ間際だけじゃなくっていつだって思い出そう)

(たくさんたくさん瞼の裏に描いては)

(僕だけの心の奥にしまっておくんだ)


 ──タタン、タタン。

 ──タタン、タタン。


 とん、と悠真は自分の頭を蒼角の頭に寄せた。
 彼女の寝息を聞きながら、
 自分の心音を確かめる。
 正しく動いてることにほっとして、
 息を吐いた。

「また来ようね、蒼角ちゃん」


 <了>

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!