#4 迷子とお迎え - 4/5

「や、迎えに来てあげたよ~蒼角ちゃん」

「ハルマサ! どうしてどうして??」

「だって蒼角ちゃん、一体どうやって帰ってくるつもりだったわけ?」

 そう言ってハルマサがポケットから出したのは──蒼角のパスケースだった。

「あ! え!? あれれ、蒼角のパスケースどうしてハルマサが持ってるの~!?」

「あのね、これデスクの上に置きっぱなしだったよ? ホロウ任務の時に置いてったんでしょ? まったくもー、これがないと地下鉄も乗れないでしょうに。はいどーぞ」

 悠真はそう言うと手の中のパスケースを蒼角へと渡した。蒼角は「ありがと」と受け取る。よくよく見ても、これは自分のパスケースである。ちゃんと中には地下鉄バス共通のカードが入っている。紛失に気づいていなかった自分の失態に蒼角は「あちゃあ」と恥ずかしそうに笑った。

「……さあ蒼角ちゃん」

「ん?」

「帰ろっか」

 座っている蒼角に向けて、差し伸べられる手。

 呆れつつも、優しい笑み。

 過去の記憶になりつつある「ねえね」の優し気な表情が 蒼角の中で思い起こされる。

「……っ、う、ん! 帰ろ!」

 悠真の手を取り、少しだけ泣きそうになった目をぎゅっと瞑った。

「──でもなんでハルマサが来たの~? ナギねえじゃなくて」

「君のママはとっても大忙しだからね~、僕がわざわざ立候補してあげたってわけ」

「そうなの!? じゃー早く帰らないと! ハルマサのお仕事後回しになっちゃうもんね!」

「んー……うんまあそうだけど僕はもっとゆっくり帰りたいかなぁなんて……」

「ほらほらハルマサ早く! あ、治安官さんたちお邪魔しましたー!!」

 蒼角は悠真の手を掴み、騒がしくも二人はルミナ分署を出ていく。そしてすぐ傍の地下鉄駅へと向けて、駆け出した。

「ハルマサ、お迎えありがと」

 ちょっぴり胸がきゅっとなる中、

 蒼角は大きな手の温もりを静かに感じていた。

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