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──その日六課には重要な任務が課された。
近く消滅作戦予定だった共生ホロウ内にて急激なエーテル活性指数が検知されたのだ。活性の原因と言える多数の危険個体を発見、殲滅する為に六課が出動し、更にはその原因調査と報告書をまとめ上げねばならないのだが……
早い話が、本日は《残業決定》である。
「こっち終わりましたよ~副課長~」
「ありがとうございます。では次はこれをお願いできますか?」
「ええ~!? はいはいわかりましたぁ~」
「柳、五課へ回す書類はこれで全部か?」
「はい課長。あ、こちらも一緒にお願いします。では蒼角、この地点で見つけたエーテリアスの件ですが……」
「えっとねぇ、ここにあった建物の中にね~?」
──すでに夜は更け、終業予定時刻からは数時間が経っている。なかなか終わらない業務に、悠真は青い顔で机に突っ伏していた。
「……もう帰りたい」
「もうすぐ帰れますよ、浅羽隊員」
「そのもうすぐってぇ~、一体どのくらいです?」
「そうですね……あと三十分から一時間もすれば終わるかと」
「ほんとですか!?」
「その為には浅羽隊員にしっかり働いてもらわなければいけないのですが」
「僕がやらなきゃあと数時間ってことね」
トホホ、と涙を流しながら悠真は身体を起こした。
「じゃ、一旦飲み物でも買ってきまーす。戻ってきたら、ちゃちゃっと終わらせるんで!」
悠真は財布を持ち部屋からさっさと出ていった──が、戻ってきて入り口からひょいと顔を覗かせた。
「蒼角ちゃんも、ジュース買ってあげるよ。おいで」
「ほんと!? やったー! ナギねえ行っていい!?」
「ええ、いってらっしゃい」
柳にそう言われると、蒼角は嬉しそうに椅子から飛び上がった。タタタッと悠真の元へと駆け寄り、「行こ、ハルマサ!」と微笑んだ。
「近くの自販機だとジュース何あったっけ」
「えっとね、お茶とコーヒーばっかりだよ!」
「あーそっか。じゃあ上の階まで行くかぁ」
「わたしぶどうジュース飲みたい!」
「ぶどうなんてあった?」
「あるよ! こっちこっち!」
そう言って蒼角は悠真の手を掴んだ。一刻も早くジュースに辿り着きたいのか、駆け足だ。
「蒼角ちゃん、疲れてるからもうちょっとゆっくり~」
「わわ、ごめん!」
謝ってスピードを落とすものの、ずんずんと進んでいく蒼角に悠真は引っ張られるようにしてついて行った。
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