#9 気づきと葛藤 - 4/4

 ***

 六課に戻ったふたりは、残りの業務に集中した。柳が先ほど言っていた通り、その後一時間もせずに退勤することができた。

ロッカールームで着替えを終え、悠真は近くのベンチに座り込んだ。蓄積された疲労に屈したのではない。今日この身に起こったことを整理する為だ。

「ふー……」

 壁に背をもたれ、天井を見上げる。

 切れた電球がそこにあった。

 ぼんやりとそれを見つめていると、

 つい一時間ほど前の蒼角の言葉が頭の中で再生された。


『ハルマサも、わたしとぎゅーしたいの?』

『じゃあ、これから毎日してもいい?』

『そしたら蒼角もハルマサもぎゅーできてうれしいよ!』

『……だめ、かな?』


「だめじゃない……って、なに約束しちゃってるんだろ僕」

 自分を嘲笑し、頭を抱えた。

「同僚でさぁ……見た目妹みたいなちっさい子でさぁ……しかも……」


 ──長命な『鬼族』


 悠真の頭の中に、蒼角の笑顔が浮かぶ。

「僕が蒼角を好きになっちゃってるってのは認めてもいいよ。

 でもあの子が僕を好きになるのは……


 酷なんじゃないかなぁ」

 


 ──ゴン、              

 と壁に頭がぶつかる音が響いた。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!