***
六課に戻ったふたりは、残りの業務に集中した。柳が先ほど言っていた通り、その後一時間もせずに退勤することができた。
ロッカールームで着替えを終え、悠真は近くのベンチに座り込んだ。蓄積された疲労に屈したのではない。今日この身に起こったことを整理する為だ。
「ふー……」
壁に背をもたれ、天井を見上げる。
切れた電球がそこにあった。
ぼんやりとそれを見つめていると、
つい一時間ほど前の蒼角の言葉が頭の中で再生された。
『ハルマサも、わたしとぎゅーしたいの?』
『じゃあ、これから毎日してもいい?』
『そしたら蒼角もハルマサもぎゅーできてうれしいよ!』
『……だめ、かな?』
「だめじゃない……って、なに約束しちゃってるんだろ僕」
自分を嘲笑し、頭を抱えた。
「同僚でさぁ……見た目妹みたいなちっさい子でさぁ……しかも……」
──長命な『鬼族』
悠真の頭の中に、蒼角の笑顔が浮かぶ。
「僕が蒼角を好きになっちゃってるってのは認めてもいいよ。
でもあの子が僕を好きになるのは……
酷なんじゃないかなぁ」
──ゴン、
と壁に頭がぶつかる音が響いた。
※コメントは最大500文字、5回まで送信できます