#15 肺と心臓 - 3/7

 ──ガラララッ

「あれ!? 浅羽さん! 面会時間過ぎてますよ!」

 急に開いた扉から看護師が一人入ってくる。すでに離れていた悠真と蒼角は顔を見合わせて苦笑いした。

「すみませ~ん。ほらほら、蒼角ちゃん早くお帰り」

「看護師さんごめんなさい! それじゃーまた明日ねハルマサ!」

「うん、また明日」

 パタパタパタ、と廊下で足音が響いた。

「蒼角ちゃん、毎日お見舞い来てますね~。いい子ですよね!」

「ふふ、とっても可愛い彼女でしょ?」

「ええ~? 彼女ってまた冗談を~。さ、寝る前のお薬こちらに置いておきますね。あ、浅羽さん、明日は朝の回診で先生から──」

 退院予定日が決まりそうだという看護師の説明を聞きながら、悠真は適当に相槌を打ちつつ自分の手を見つめた。



(蒼角ちゃんのおかげで、僕はエーテリアスにならずに済むのか)

(この手で、誰かを殺したりしなくて済む)

(これで悪夢からも解放されるかな)

(僕を食べたい、だなんて最初はどういうことかと思ったけど)

(恐怖よりも安堵の方が上回った僕は……あの鬼の子と同じようにどこかおかしいのかもしれない)


「……んー、でも僕が食べられるよりもまずは蒼角ちゃんを食べたいなぁ~……なんて。いや、これ聞かれたら月城さんにめちゃくちゃ怒られそ」

 一人になった病室で、悠真は布団を被った。

 ──唇に当たった硬い歯の感触を思い出しながら。

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