──ガラララッ
「あれ!? 浅羽さん! 面会時間過ぎてますよ!」
急に開いた扉から看護師が一人入ってくる。すでに離れていた悠真と蒼角は顔を見合わせて苦笑いした。
「すみませ~ん。ほらほら、蒼角ちゃん早くお帰り」
「看護師さんごめんなさい! それじゃーまた明日ねハルマサ!」
「うん、また明日」
パタパタパタ、と廊下で足音が響いた。
「蒼角ちゃん、毎日お見舞い来てますね~。いい子ですよね!」
「ふふ、とっても可愛い彼女でしょ?」
「ええ~? 彼女ってまた冗談を~。さ、寝る前のお薬こちらに置いておきますね。あ、浅羽さん、明日は朝の回診で先生から──」
退院予定日が決まりそうだという看護師の説明を聞きながら、悠真は適当に相槌を打ちつつ自分の手を見つめた。
(蒼角ちゃんのおかげで、僕はエーテリアスにならずに済むのか)
(この手で、誰かを殺したりしなくて済む)
(これで悪夢からも解放されるかな)
(僕を食べたい、だなんて最初はどういうことかと思ったけど)
(恐怖よりも安堵の方が上回った僕は……あの鬼の子と同じようにどこかおかしいのかもしれない)
「……んー、でも僕が食べられるよりもまずは蒼角ちゃんを食べたいなぁ~……なんて。いや、これ聞かれたら月城さんにめちゃくちゃ怒られそ」
一人になった病室で、悠真は布団を被った。
──唇に当たった硬い歯の感触を思い出しながら。
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