#15 肺と心臓 - 4/7

 ***

「──柳と火鍋を囲むのは、久しいな」

 箸を手に取りながら、星見雅は言った。鍋の湯気で眼鏡が曇ってしまった月城柳は「そうですね」と答える。

「蒼角は今日も悠真のところか」

「ええ。面会時間に間に合わない、と急いで行きました。課長と一緒に火鍋を食べることを伝えたので、このあと来るかもしれません」

「む、それでは食べながらゆるりと待つとするか」

 ぐつぐつと煮えた具を、皿に取る。雅はふぅ、ふぅ、と息を吹きかけて冷ますと、熱々のつゆを啜った。

「それにしても浅羽隊員が早くに職場復帰できるようで安心しました」

「ああ、あの時はもうダメかと思った」

「課長……」

「柳、お前もそうだろう。こんなことを言ってはいけないのはわかっているが、あの場で希望を持っていたのは蒼角だけだった。そして、誰より死と向き合っていた」

 雅は目を伏せ、ホロウで悠真が倒れた時のことを思い返していた。

送信中です

×

※コメントは最大500文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!