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「それじゃお疲れさまでーす!」
ハルマサの声が六課のお部屋にひびいた。
パタパタパタって走っていく音が聞こえて、わたしもあわてて立ち上がった。
「わたしも! おつかれさまー!」
ナギねえとボスにそう言って、六課のお部屋を出て廊下を走った。
廊下は走っちゃいけません、ってH.A.N.D.に来てから最初にナギねえに教えてもらったけど、ちょっとくらい走っても怒られないこと蒼角は知ってるんだ。
だから
ハルマサに置いてかれないように走った。
更衣室でお着替えして、
H.A.N.D.を出て、
地下鉄に乗って、
しばらくの間電車にゆられてるとなんだか眠くなっちゃって。
「……ふぇ、わわ、今どこ!?」
あわてて次の行先を見たら、ルミナスクエアって書いてた!
わたしはびっくりして席から立ち上がって、
隣のシャリョーにいるハルマサも降りる準備をしてるのがわかって見えないようにちょっと隠れたりした。
ぷしゅー
ガガガガー
って、音が鳴ってドアが開いた。
それで人混みに押されながらハルマサの背中を追いかけて
追いかけて
階段を
上って
わわっ
転んじゃう
ハルマサまだいる?
あれれ
どこ
「──悠真!」
名前を呼んだのは
わたしじゃなくって。
「……あ、ごめんごめん。もしかして待った?」
呼んだひとに、ハルマサは手を振ってて。
あれ
あれれ?
ハルマサの後ろ姿がようやく見えた時には
ハルマサはもう、プロキシと一緒に歩き出してて。
わたしが地下鉄の階段を登り切って
ぺってお外に吐き出された時には
ハルマサはもう
プロキシと横断歩道の向こう側にいて。
あれれれれ。
胸の内側にね
いっぱいフサフサの毛が生えてるとしたらね
それが
ぶわわわわー!
って
急に逆立ったみたいに
それで
その毛があっちへこっちへ動き出すみたいに
ざわざわざわ
って。
ざわざわ
ざわ。

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