ハルマサがルミナスクエアのビルに入ってく。
見えなくなっちゃう。
ふたりでどこに行くの?
蒼角に内緒で、どこ行くの?
ねえねえ何してるのって聞かないと。
聞かないと。
聞かないと!!
走って
慌ててビルのドアの前に立ったら自動ドアがなかなか開かなくって。
開いた隙間から無理矢理中に入って
走って
ビルの中は走ってもいいんだっけ?
怒られちゃうんだっけ?
蒼角、出てけってケービインさんに言われちゃう?
でも
待って
置いてかないで
「──だったら、こっちの方がいいなぁ~」
「ふーん、リンちゃんはそーゆーのが趣味なんだ」
「んもーそうじゃなくってー」
エスカレーターを上った先で聞こえてきた声。
どんなに遠くたって
聞き間違えるわけがない
ハルマサの声。それに、プロキシの声も。
「じゃあさ、これとこれだったらどっちが良いかな」
「うーんそうだなぁ……」
ハルマサが何を手に持ってるかわかんない。
でもプロキシがすごく真剣な顔でそれを見てて
それからちょっと笑って指さそうとして
今そこで何が起こってるのかなんて全然わかんないけど
わかんないけど
すっごく
嫌で
「……ハルマサ!!」
今度はちゃんと
わたしが名前を呼んだ。
息切れしてて
苦しくて
かすれてたかもしれないけど
でも届いたと思う。
ハルマサはすっごくおどろいた顔してこっち見てた。
「蒼角ちゃ──」
わたしの名前を呼びかけて
でもいつもみたいに最後まで呼ぶんじゃなくて
お目目がおっきくなって
わたしを見てた。
聞こうと思った。
どうしてプロキシとふたりで一緒にいるの?
何の約束してたの?
何をふたりで見てるの?
どうしてそんなに楽しそうな顔してるの?
なんでわたしはこんなにいろんなことたくさん聞きたくなるの?
なんでこんなにお鼻の奥が痛いの?
なんで見てる世界がこんなにぼやけてるの?
なんでほっぺたが熱くて、それなのに冷たいを感じるの?
なんで
お目目からいっぱい涙がでてるの?
「うっ、ああっ……うわあああああああああん……!!」
恥ずかしいくらい大きな声が出た、
急にすごく小さな子になったみたいに。
涙が止まらなくて力も入らなくて
冷たい床にぺたんて座っちゃった。
ハルマサが近くに来て
わたしに何か言ってた。
けど
わたしは泣くのをやめられなかった。
わたしが泣き止んだのは
ケービインさんがやってきて
二人のプロキシが何か話してて
それからハルマサがぎゅーって抱きしめてくれたあとだった。

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