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「うわあ~~~!!」
部屋に入るなり、蒼角は興奮したように飛び跳ねた。
「すごい、お部屋綺麗! おっきなテレビもある! なんかお風呂ガラス張りだ!? あ、ご飯のメニュー表!」
ひとしきり部屋の中を駆け回った蒼角は、メニュー表を手にソファの上にぴょんと座った。悠真はひとまず誰にも見られずに部屋の中へ入れたことに胸を撫で下ろし、奥のベッドへと座った。そしてベッド脇に置かれた《行為の必需品》をさっと取るとポケットにしまう。
(蒼角ちゃんなら、これ何のお菓子だろ〜とか言って開けかねないからね……)
見られていないことを確認して悠真は一息ついた。
「ハルマサ、わたしご飯頼んでもいい!?」
「はいはいどーぞ。何食べるの?」
「えっとね~……わわっ、これすごいよ! おおきなハンバーグもステーキも食べれる~!! あ、でもでもデザートも種類がいっぱい……ひゃあ~! なんかふかふかのパンケーキにいっぱいフルーツとアイスがのってる!?」
歓喜する蒼角に、悠真は苦笑しつつごろんと体を横たえた。ベッドが彼を包み込むと、疲労には抗えないようで眠気が襲ってきた。
「ちょっと、寝るかな……」
「ハルマサ寝るの~?」
「ん……」
「あ、ねぇねぇテレビつけてみてもいーい?」
「──それはちょっと待った!!」
今まさに眠りに落ちようとしていた悠真だったが、がばっと勢いよく上半身を起こした。
「テレビは、だめ!」
「え、ええ? だめなの? 何かおもしろい番組やってるかなーと思って……あ、ちゃんと音量下げるよ!?」
「そうじゃない、そうじゃなくて……」
(ラブホでテレビなんて点けたらAVが流れるかもしれないでしょうが……!!)
全身の血の気が引いていくのを感じながら悠真はベッドから立ち上がった。そして今まさにテレビの電源を入れかねない蒼角の手元にあるリモコンをひょいと取り上げるとそれをテーブルの上に置いた。
「……どうしてだめなの?」
「あーっとねぇ……多分面白いものなんて今やってないだろうからさ」
「ええ~? 見てみないとわかんないよ?」
「いや、絶対やってない」
冷や汗をだらだらと流しながら必死にそう言う悠真に、蒼角は困惑した様子で首を傾げた。しかし素直に「わかったー」と言うとまたメニュー表に目をやった。
「──とにかく、僕は寝るけど絶対テレビは点けないでね」
「はーい」
「ほんとにわかってる!?」
「わかってるってばぁ~。もー、ハルマサはシンパイショーだなぁ」
「はあ……それじゃ、一時間後に起きるから」
「はぁ~い。ハルマサおやすみ!」
「はいはい、おやすみ」
そう言うと悠真はベッドへ潜り込んだ。
(僕が寝てしまえば何も起きやしないでしょ。とにかく起きたあとはさっさとここを出てホテルから離れて……)
そこまで考えると、悠真の思考は止まった。
眠りに落ちたのだ。
──蒼角は食べるものが決まったのか上機嫌で備え付けられた電話を手に取るとフロントへ注文をした。
「すみませんっ、るーむさーびすをたのんでもいいですか? えーっと……パンケーキひとつ!」
本当はハンバーグが食べたかったようだが、先程ラーメンを食べたこともあり注文はパンケーキにしたようだった。注文出来たことに満足しニコニコとしたまま受話器を置くと、軽快な足取りでソファの方へと戻ってきて、隣に置かれたベッドで眠る悠真の様子をそっと伺う。
(……あれぇ? ハルマサ、もう寝ちゃったのかな)
静かな寝息を立てている様子に、蒼角はとても感心した。
(六課のソファで仮眠取る時も、ハルマサはとっても寝るの早いもんね~。十秒もあれば寝ちゃうんじゃないかなぁ)
蒼角は悠真の特技に感動すら覚えながらも、ソファに座り直した。
──ルームサービスはしばらくして届いた。蒼角はやってきたパンケーキをテーブルの上へと運ぶと、満面の笑みで「いただきまーす!」と食べ始めた。
「んん~~っ! 美味しい! ふっかふかだぁ!! こんなにおいしー食べ物があるなんて知らなかったよ~。ここ、本当はホテルじゃなくってご飯屋さんなんじゃないのかな?? 今度は一人で来てみよーっと!」
はむはむと食べ進め、あっという間にお皿の上は何も無くなってしまった。満足したようにお腹を摩ると、蒼角はテーブルの上のメニューに目をやる。
「……あんまり食べすぎちゃ、だめだよねぇ」
残金を確認し悩んだ末、蒼角はメニューから目を逸らした。
「はーあ、ハルマサ起きるまで暇だなぁ。一時間後に起きるって言ってたけどー……あと三十分くらい? うーん……あ」
蒼角は目の前に置かれたテレビを見て、にやりと笑う。
「ハルマサは見ちゃダメって言ってたけどー……寝てる間にこっそりならいいよね! 静かにしてればきっとバレないもん」
ふふふん、と鼻歌を歌うように蒼角はリモコンを手に取ると、それをテレビに向けた。
そして電源をボタンを押す。
──点けた瞬間、半裸の男女がドアップで映し出された。
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