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悠真に見送られながら、蒼角は地下鉄へと乗った。
──タタンタタン、という規則的な音が地下鉄車内に響き渡る。少し混みあった車内で蒼角は隅っこの方に立っていた。先ほどまで一緒にいた悠真の顔を思い浮かべながら、ぼんやりと今日の出来事を思い返す。そして、時々自分の唇に触れては耳を熱くさせるのだ。
「……っ」
ガラスに映り込んだ自分の顔を見て、思わず目を逸らす。
そこに映っているのが、
今までと違う自分のように感じたから。
(わたし、ハルマサの恋人になったんだよね)
(恋人って、すごいなぁ)
(こんなに胸がぎゅっってなること、みんなしてるの?)
(ハルマサも、おんなじように胸がぎゅってなったのかなぁ)
蒼角は周りに気づかれないようにため息を吐いた。
(ナギねえには、恋人になったんだよ! って教えてあげた方がいいかなぁ。ナギねえ喜んでくれるかな)
うーんと考え、蒼角は眉を下げた。
(わかんないけど、今度ハルマサにきいてみよっと)
──タタンタタン
──タタンタタン。
「早く会いたいなぁ」
その呟きは走行音にかき消された。
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