#12 約束と口づけ - 9/9

 ***

 悠真に見送られながら、蒼角は地下鉄へと乗った。

 ──タタンタタン、という規則的な音が地下鉄車内に響き渡る。少し混みあった車内で蒼角は隅っこの方に立っていた。先ほどまで一緒にいた悠真の顔を思い浮かべながら、ぼんやりと今日の出来事を思い返す。そして、時々自分の唇に触れては耳を熱くさせるのだ。

「……っ」

 ガラスに映り込んだ自分の顔を見て、思わず目を逸らす。

 そこに映っているのが、

 今までと違う自分のように感じたから。

(わたし、ハルマサの恋人になったんだよね)

(恋人って、すごいなぁ)

(こんなに胸がぎゅっってなること、みんなしてるの?)

(ハルマサも、おんなじように胸がぎゅってなったのかなぁ)

 蒼角は周りに気づかれないようにため息を吐いた。

(ナギねえには、恋人になったんだよ! って教えてあげた方がいいかなぁ。ナギねえ喜んでくれるかな)

 うーんと考え、蒼角は眉を下げた。

(わかんないけど、今度ハルマサにきいてみよっと)


 ──タタンタタン

 ──タタンタタン。


「早く会いたいなぁ」

 その呟きは走行音にかき消された。

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