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キィ──とゆっくり扉が開いたのは、六分街にあるビデオ屋だ。カウンターに立っていたボンプ──18号はやってきた客を見て「ンナ!」と声を上げた。
「どうしたのトワちゃん、お客さん……蒼角!」
店長のリンは入ってきた蒼角に嬉しそうな声を上げた。
「どうしたの蒼角~、お仕事帰りにビデオ借りに来てくれたの? もしかしてまた柳さん待ち? あれ、でもまだこんな時間かぁ。もしかして早上がりだった?」
リンの立て続けの質問に、蒼角は反応を示さない。
静かな蒼角にリンは疑問を抱き、首を傾げた。
「蒼角……どうしたの?」
「……プロキシぃ」
「ん?」
「今日、ここにお泊りさせて」
──リンは目をぱちくりとさせ、目の前の蒼角を見つめた。
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