その後の兄妹 #2『暑い夏の日には』
夏の六分街。 燦燦とした日光に照らされ道行く人々は汗を流している。 ひとたび建物の中に入ればひんやりとした空調の恩恵を受けることにはなるのだが、 ただここ、 仲の良い兄妹が営むビデオ屋は今日はそうではないようで──「あーづーいー!」 店内…
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その後の兄妹 #1『くちづけ』
――六分街にあるレンタルビデオ店<Random Play>は今日も仲の良い兄妹で開店準備をしている。陳列棚の整理は従業員であるボンプたちに任せ、兄はレジ開けの準備を、妹は外から見えるウィンドウディスプレイ部分を模様替え中だ。「お兄ちゃん、…
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#13 これからも二人で
「お兄ちゃん、さあ乗って!」 病院前に乗り付けた見慣れた車、運転席にはリン。 アキラはドアを開け、助手席に座った。「も~昨日は大変だったよ~」 そうぼやくリンの横顔を見てアキラは苦笑いをする。「お疲れ様、リン」「お兄ちゃんこそ、お疲れ様」 …
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#12 幼き日の記憶
大声で泣く子ども。 身を寄せ合うカップル。 しきりに電話をかけようとするスーツ姿の男。 どこかで警報が鳴っている。 何かをしきりに叫ぶ声。 通信が遮断されたテレビが暗闇を映す。 ひりつくような、肌で感じるホロウの感覚。 イアス越しとは違う…
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#11 臨時休業
「――ご注文の品はこれで全部ですか~?」 お昼時、快活な声がホビーショップ<BOX GALAXY>の店先で響く。アキラはスージーから商品の入った箱を受け取ると、確認して頷いた。「ああ、全部あるよ。ありがとう」「はーい、これからもごひいきに~…
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#10 不明瞭な気づき
「おはよう、リン」「おはよ、お兄ちゃん」 朝の洗面所、顔を洗っていたアキラが後からやってきたリンに挨拶をした。お互いに昨日起こったことなど何も覚えていないかのように普段通りの表情。アキラがタオルで顔を拭いていると、リンが隣で歯磨きを始める。…
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#9 腕の中のぬくもり
「ンナナ~」 店番をする18号のあくびにも似た鳴き声が静かな店内に響いた。 昼時、<Random Play>に客は人っ子一人いない。 開店休業状態などと言われても仕方がないが――店内の奥、客の立ち入ることのできないその部屋の中では今まさにこ…
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#8 邪兎屋のビデオ鑑賞会
――これは少し前の、アンビーがアキラとリンに『ビデオ』を頼んだ頃の話である。「パエトーンに、18禁ビデオの仕入れをお願いしたぁ!?」 ニコのどでかい声が事務所に響き渡り、耳の良い猫又は慌てて三角耳を塞いだ。そのすぐ隣にいたビリーはというと…
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#7 満たされて
雑貨店141には何でもある。 新発売で人気急上昇中なお菓子も、 ちょっと切らしてしまった定番の日用品も、 料理の途中で突然必要になった食材や調味料も、 必要なものは何でも揃ってる! ……でもどれもちょっと高い。 食材を買うのなら、少し遠出…
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#6 食われ尽くした結果
『ねぇ、お兄ちゃん』 彼女の指先が太ももを伝った。「う……リン……?」 ジーンズの厚い生地越しでもわかる、しなやかな指先。『ほんとはこういうこと、望んでたんでしょ?』 縫い目を辿って、ゆっくりと這い上がってくる。「いや、まっ、待て」 制止し…
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#5 そしていつも通りの日々へ
「店長ー! 俺とスネークデュエルで対戦しようぜー!!」 バターン! と開かれたビデオ屋の扉に驚いた店内数名の客と受付台に立つ18号とその横に立っていたアキラが、唐突な来訪者であるビリーを見た。ビリーは『きゅるん』という可愛らしい効果音が聞こ…
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#4 風邪を引いたら
「パエトーン、相談があるんだけど! ……って、あれ?」 ビデオ屋奥の従業員専用部屋にニコの声が響き渡ったが、そこにいたのは驚いた顔の6号のみ。受付にいる18号はやれやれまたかといった顔で頭を振っている。「ちょっと~、店長たちはどこにいるわけ…
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